酢酸エチルは、実験室で頻繁に使用される有機溶媒です。沸点も適度で溶解性も程よくあり、分液の際の抽出溶媒としてもよく使われます。

しかし、どんな時でも酢酸エチルが最適というわけではありません。

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酢酸エチルの加水分解に注意

酢酸エチルは、酢酸とエタノールのエステルです。エステルは、HClなどの強酸やNaOHなどの強塩基を触媒として加水分解反応を起こします。

よって、酢酸エチルで抽出する際の水層がHCl水溶液、またはNaOH水溶液などの場合は、加水分解反応により酢酸とエタノールが生成する可能性があります。

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特に塩酸などの強酸水溶液の場合は酢酸が有機層に残りやすい

室温で分液する場合は、加水分解反応はそこまで早くないので生成する酢酸とエタノールは少量だと思います。しかし、塩酸などの酸によって生成した酢酸は、水層にある程度は逃げますが有機層にも残りやすいです。

この有機層に残った酢酸は、エバポレーターで飛ばすのがなかなか大変だったりします。

一方NaOHなどの塩基で生成した酢酸は、水層のNaOHとの中和反応により酢酸ナトリウムになるため、有機層には残りません。そういう意味ではNaOH水溶液の方が多少ましではあります。

強酸、強塩基の水溶液で分液する場合に適した溶媒

それでは、強酸、強塩基の水溶液で分液する場合、どんな溶媒が良いのか?

それは「酸、塩基に対して安定な溶媒」ということになります。例えばですが、下記のような溶媒が候補に挙がります。

・ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒
・ジエチルエーテルなどのエーテル系溶媒
・トルエンなどの芳香族系溶媒
・シクロヘキサン、N-ヘキサンなどの炭化水素系溶媒

こうしてみると、ハロゲン系溶媒以外で、水と混じらない溶媒の中では酢酸エチルはかなり良い溶媒ですよね。ジエチルエーテルとかシクロヘキサンとかは溶解性が微妙ですし、トルエンは飛ばすのが少し大変ですし。

以上、分液に限らず、その時その時に応じて適した溶剤や試薬を使い分けていきたいものです。

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