THFは多くの有機化合物をよく溶かし、反応溶媒として使われることが多いです。
しかし、水と混和するために、分液の時に少しやっかいです。
分液の前に、THFをエバポレーターで飛ばしてから別の溶媒で分液するのが確実ですが、少々面倒ですよね。
そんな時には、飽和食塩水を使うと二層に別れ、THFのまま分液を行うことができます。
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なぜ飽和食塩水だと分離するのか?
結論としては、「塩析」によるものと考えられます。塩析についての説明は、wikipediaを引用させていただきます。
塩析(えんせき、英語:salting out)は、タンパク質や低分子有機化合物などの溶質が高濃度の塩の溶液には溶解しないという性質を利用し、それらを分離・精製する方法である。
低分子有機化合物の場合
低分子有機化合物の場合の塩析は塩類の水和によって説明できる。塩類を水溶液に加えるとその強い水和力によって水分子を水和水として固定する。そのため、低分子有機化合物の水和に必要な水分子の量が減少し、析出(沈殿や浮遊)を起こす。
つまり、THFを水和していた水を、NaClが水和水として奪うため、水和できなくなったTHFが遊離して2層に分かれるということです。
また、THFは水と混和しますが、ギリギリで混和できる程度の溶解度なのだと考えられます。そのため、塩析による2層分離を起こしているのでしょう。
ちなみに、他の水と混ざる有機溶媒(例えばメタノールなど)の場合は、溶媒の水和力が強いためにこのような方法は適用できません。
THFによる分液のメリット
★作業の短縮
上でも述べましたが、反応にTHFを使用した場合、分液をするために一旦THFをエバポレーターで飛ばす手間が省けます。
★THFは抽出力が強い
THFは比較的有機化合物を溶かす力が強いです。そのため、他の酢酸エチルやジクロロメタンで抽出できなかった化合物であっても抽出できる可能性があります。
THF分液の注意点
★塩析でも完全には分かれてない
塩析によって2層に分かれているとはいえ、水層にもTHFは残っています。そのTHFに引きずられて化合物も水層に逃げている可能性があるので、水層をいったん分離したら、数回酢酸エチルなどで抽出した方が安全です。
また、THF層にも普通の有機溶媒で分液したときより水分を多く含んでいるので、硫酸マグネシウムなどを用いてしっかり乾燥させましょう。