HPLCとは、有機化合物を分析する装置の一つです。日本語では高速液体クロマトグラフィーといいます。

今回は、そのHPLCの仕組み、基本的な使い方について書いていきます。

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HPLCの仕組み

HPLCは、大まかに下記のような構造をしています。(模式図です)

HPLC模式図

各装置について簡単に説明していきます。

★送液ポンプ

シリンジ等で打ち込まれたサンプルを移送するためのポンプです。ガロン瓶などから送られた溶媒(移動相)によってサンプルをカラム→検出器へと送る役割を持ちます。

★カラム

ポンプによって送られたサンプルは、このカラム中で分離されます。カラムには充填剤が詰められており、充填剤の種類によって分離の仕方が異なります。

★カラムオーブン

化合物の分離の仕方は、温度によって変わります。分析の再現性を得るためには温度を一定に保つ必要があります。そのためのオーブンです。

★検出器

カラムで分離された化合物は最後に検出器に送られ、電気的信号で出力されます。検出の方法として最も一般的に使用されているのは、UVによるものです。化合物にもよりますが感度がかなり高く、微量の物質も検出できます。

UV吸収を持たない化合物の場合は屈折率を利用したもの、光散乱を利用したもの等もあります。

HPLCの基本的な使い方

HPLCの基本的な使い方を説明します。

①装置の立ち上げ

各種装置を立ち上げます。カラムオーブンは測定する温度にセットします。

②配管内の空気を抜く

HPLC用のカラムは、空気が入ってしまうと正確な分析ができません。また、カラムの劣化にも繋がりますのでカラム手前の配管の空気を抜きます。空気の抜き方は・・・装置によります。

③ポンプ起動、安定化を待つ

測定する流速でポンプを起動し、ベースラインが安定するのを待ちます。安定化までの時間は装置によりますが、私は1時間程度待ちます。今時だいたいの装置はPC上でモニターできると思います。

イメージ的には下記のような感じで、赤線がベースラインです。(あくまでイメージです。縦軸のスケール等によっても感じは変わります)

HPLCベースライン安定

④サンプルの準備

打ち込むサンプルを準備します。サンプルは、不溶物の無い溶液」であることが絶対条件です。不溶物がある場合はフィルターで濾過してください。

濃度は打ち込む化合物やカラムの種類によりますが、目安としては1mg/mLくらいですかね?まあモノの感度や溶解度によって調節してください。

化合物は移動相と同じ溶媒に溶解するのがベストですが、移動相への溶解性が悪い場合は他の溶媒でも大丈夫です。

⑤サンプルを打ち込み、測定

ベースラインが安定化したら、サンプルを打ち込みます。この時も気泡を一緒に注入しないように気を付けてください。オートサンプラー(自動でサンプルを打ち込んでくれる装置)が付いているならそれに任せます。

⑥解析

最後に解析です。測定結果は、今時はPCに取り込まれますので、PC上で解析を行います。ピークとしては、下記のようなスペクトルとして得られます。(イメージです)

下記の場合は、4つの化合物が分離されてスペクトルとして検出されています。

HPLCピーク例

分析条件さえ同じであれば、同じ化合物は同じ時間にカラムから溶出します。この時間を保持時間(リテンションタイム)と呼びます。HPLCでは、このリテンションタイムによって化合物を判別します。

どのような時にHPLCを使用するのか

ここまでHPLCの大まかな仕組みと使い方について書いてきましたが、どのような時にHPLCを用いるのが良いのでしょうか?

例えば、次のような場合にHPLCは有効と考えられます。

★反応の追跡

反応液を時間ごとに打ち込み、原料のピークを追跡することによって、反応の進行をモニターすることができます。同じ用途としては、TLC(薄層クロマトグラフィー)がありますが、TLCより優れている点としては、反応率が数字で出てくる点です。TLCではどうしても主観が入るのに対し、HPLCは客観的に反応推移を見ることができます。

一方、TLCに劣る点としては、多量の溶媒を使用すること、分析に時間がかかることです。用途によって使い分けるべきでしょう。

★純度分析

HPLCではピークの強度は化合物の量に対応しますので、ピークの面積比を出すことにより、目的物がどの程度の割合で含まれているかを知ることができます。(化合物によって感度が異なるため、精確に含有比率を出すことはできませんが)

ちなみに、私は大学の頃はTLCとNMRしか使用していませんでしたが、HPLCも活用できる場面があったと思います。場面場面で、使えるものは使っていきましょう。

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