実験室で使う酸といえば、みなさんは何を思い浮かべるでしょうか。
私は独断と偏見で塩酸(HCl)と硫酸(H2SO4)を思い浮かべます。今回はこの2つの酸の違いについてです。
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硫酸と塩酸の違い
★揮発性
一番の違いは、揮発性にあります。
塩酸は、それ自体は常温で気体であり、水溶液として市販されています。一方硫酸はそれ自体は不揮発性の液体です。
濃度35~37%の水溶液として市販されている濃塩酸は、HClが揮発してくるため臭いがそこそこきついです。HCl自体も一応有毒なため、ドラフトで扱う必要があります。
また、エバポレーター等を使用する場合は、揮発してきたHClガスによって機械が腐食してしまう恐れがあります。
一方、硫酸は不揮発性のため上記の心配はありません。しかし、不揮発性のため、こぼしたりするとずっとそこにあることになります。加えて濃硫酸には脱水作用があるため、皮膚につくと大変です。(私は皮膚についたことはありません)
★価格
こちらについては、私も今まで気にしたことがなかったので少し調べてみました。
参考にしたのは、和光純薬工業さんのページです。同じ等級(和光一級)、500mLで比較した結果、塩酸は740円、硫酸は800円でした。
比重、濃度、分子量を踏まえて1molあたりの値段を計算すると、
塩酸:131円/mol
硫酸:90円/mol
となりました。硫酸の方がmolあたりの値段は安いですね。加えて硫酸は2価の酸であることを考えると、ただ単に中和などに使う場合は、硫酸の方がお得ということになります。
まあ、そこまで気にするほどのことでもないですかね。
硫酸と塩酸の使い分け
それでは、塩酸と硫酸はどう使い分けたら良いのか?ということについてですが、結論としては「基本的にどっちでもいい」と思います。
私の使い分け方を参考までに書いておくと、基本的には塩酸を使います。硫酸は万が一こぼした時にめんどくさいのと、濃硫酸を希硫酸にするのがめんどくさいからです。
硫酸を使うのは、エバポレーターで酸のまま濃縮したりするなど、HClの揮発性によって機械が腐食したり、HClが反応する恐れがある(例えばOH→Cl)場合などです。
あとはイメージ的にですが、脱水エステル化などの酸触媒には塩酸ではなく硫酸を使うことが多いと思います。これも塩酸の場合は揮発性によって濃度が変わってしまう恐れがあることが要因としてあると考えられます。
まとめ
まとめとしては、塩酸と硫酸の違いは下記のようになります。
取り扱いやすさ:塩酸>硫酸
価格の安さ:硫酸>塩酸
硫酸は不揮発性、塩酸は揮発性
上記の特徴を踏まえた上で、その場に適した酸を選択すればいいと思います。