合成のプロセスにおいて、濾過というのは非常に重要で、かつ非常にトラブルが起きやすい工程です。
実験室レベルでは何でもない作業である濾過ですが、工場で百キロスケールともなると勝手が違ってきます。
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工場での濾過
工場で濾過をする場合、加圧式の濾過器が多く使われます。下にだいたいの模式図を書きます。
スラリーを濾過器に投入した後、窒素ガス等で濾過器内部の圧力を高め、その力で母液を押し出します。
目詰まりについて
濾過の際によく起こる問題としては、目詰まりがあります。原因としては、濾過する物質の粒子径があります。粒子が細かいと、その粒子がろ紙の目を塞いでしまうため、詰まりの原因となります。
また、濾過後半に、粒子の量が多くなってきて堆積する高さが高くなると、だんだん濾過が遅くなってきて、最悪途中で詰まってしまうということも起こります。これも、粒子径の小さな物質ほど起こりやすいです。
目詰まりの対策
目詰まりの対策としてはいくつかありますが、固体成分が欲しいものなのか、ろ液が欲しいものなのかでその対策は変わってきます。
●ろ液が欲しいものの時
ろ液が欲しいものであり、濾過残さは廃棄する場合、濾過助剤を用いることが多いです。濾過助剤とは、その名のとおり濾過を補助する役割を持つ粉状のものです。有名なものとしてはセライトがあります。セライトの他にもいろいろな種類の濾過助剤があります。
濾過助剤の使用方法としては2種類あります。
一つ目は「プレコート」と呼ばれる方法で、予めろ紙の上に助剤を敷き詰めておいて、そこに濾過したいスラリー等を流し込みます。これにより細かい粒子がろ紙に到達する前に補足することができます。
二つ目は「ボディフィード」と呼ばれる方法で、濾過したいスラリー等に助剤を混ぜ込んで濾過します。これによって、粒子が堆積するにつれて濾過が遅くなっていく現象の緩和が期待できます。
●固体が欲しいものの時
再結晶後の濾過など、固体が欲しいものの場合は、上述した濾過助剤は使えません(助剤が混ざってもいいなら別ですが)。そういった場合は、結晶径を大きくする工夫が必要です。
再結晶であれば、高温で結晶をゆっくりと析出させて、攪拌の速度を落とすことによって粒子径を大きくする効果があります。
また、ろ紙の種類を変えるのも一つの手だと思います。結晶側を回収する場合、できるだけろ紙の目開きの径が大きいものを使うことが望ましいです。
「吸引濾過」