有機溶媒には様々な種類がありますが、実験室で基本的に使用する代表的な溶媒というのはだいたい決まっています。ここでは、有機合成をする上でこれだけは知っておいたほうが良いという溶媒を紹介します。

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これだけは押さえておきたい有機溶媒

・ジクロロメタン

ジクロロメタン融点:-95℃(1)
沸点:40℃(1)
比重:1.33(1)
水への溶解度:微溶(1.3g/100mL、20℃)(1)

実験室で汎用されるハロゲン系溶媒。様々なものを適度に溶かすので使いやすい反面、沸点が低く発がん性が疑われており、特定化学物質に指定されるなど法規制は厳しいです。

分液操作で下層にくる数少ない有機溶媒です。

・クロロホルム

クロロホルム融点:-64℃(1)
沸点:61℃(1)
比重:1.49(1)
水への溶解度:難溶(0.8g/100mL、20℃)(1)

ジクロロメタンと同じく、実験室で汎用される。こちらもいろんなものをよく溶かすので使いやすいが、近年ジクロロメタンと同様に特定化学物質に指定されました。

NMRの重溶媒としてもよく使われます(CDCl3

・THF(テトラヒドロフラン)

THF融点:-108℃(1)
沸点:66℃(1)
比重:0.89(1)
水への溶解度:混和する(1)

沸点が適度で除去しやすく、多くの有機化合物をよく溶かします。反応溶媒として非常によく使われます。水と混和しますが、飽和食塩水などとは2層に分かれるので分液も可能です。市販品には過酸化物の生成を防ぐため、安定剤としてBHTがごく少量含まれている場合が多いので、大量に使用した場合はBHTの残存に注意しましょう。

・ジエチルエーテル

ジエチルエーテル融点:-116℃(1)
沸点:35℃(1)
比重:0.72(1)
水への溶解度:可溶(6.9g/100mL, 20°C)(1)

一般的に実験室でエーテルといったらこれを指すことが多いです。融点と沸点が低く、低温での反応に使われることが多いです。また、DMFを取り除きたい時、ジエチルエーテルで抽出して水で2~3回洗浄すればDMFをほぼ取り除くことができます。THFと同様に過酸化物を作りやすく、市販品にはBHTが少量含まれていることが多いです。

・アセトン

アセトン融点:-95℃(1)
沸点:56℃(1)
比重:0.79(1)
水への溶解度:混和する(1)

水と混和し、有機化合物も溶かします。加えて乾燥が早く、毒性も有機溶媒の中では比較的低いために、実験で使ったガラス器具の洗浄に使われます。

・メタノール

メタノール融点:-98℃(2)
沸点:64.7℃(2)
比重:0.792(2)
水への溶解度:混和する(1)

最も単純なアルコールです。加水分解反応の反応溶媒や、カラムクロマトグラフィーの極性溶媒として使われます。カラム溶媒として使う場合は、例えば酢酸エチルに少量混ぜただけでも極性がかなり変化しますので注意しましょう。ちなみに、N-ヘキサンとは完全に混合せず二層系を作ります。

・エタノール

エタノール融点:-117℃(3)
沸点:79℃(3)
比重:0.79(3)
水への溶解度:混和する(4)

メタノールに炭素が一つついた化合物です。有機合成だけでなく、お酒のアルコール分というのはこのエタノールです。有機合成的には主に反応溶媒やカルボン酸のエチルエステル化などに使われます。実験室にあるのは工業用エタノールだと思いますので、飲んではいけません。

・酢酸エチル

酢酸エチル融点:-83℃(2)
沸点:77℃(2)
比重:0.902(2)
水への溶解度:微溶(1)

実験室で多用される有機溶媒です。主にカラムクロマトグラフィーの展開溶媒や、分液時の抽出溶媒として使われます。構造中にエステルを持つため、化学的安定性の面から反応溶媒として使われることはあまりありません。

・トルエン

トルエン融点:-95℃(1)
沸点:110℃(1)
比重:0.87(1)
水への溶解度:不溶(1)

芳香族系の有機溶媒では、発がん性の認められているベンゼンに代わって、最もよく使われると思われる溶媒です。そこそこ高い沸点を持ちますが、エバポレーターで除去できる程度なので使いやすい溶媒だと思います。反応溶媒や再結晶溶媒としてよく使われます。

・N-ヘキサン

N-ヘキサン融点:-95℃(1)
沸点:69℃(1)
比重:0.66(1)

水への溶解度:不溶(0.0013g/100mL, 20°C)(1)

・ジメチルホルムアミド(DMF)

融点:-61℃(1)ジメチルホルムアミド
沸点:153℃(1)
比重:0.95(1)
水への溶解度:混和する(1)

非プロトン性の極性溶媒で、様々な有機化合物、無機化合物をよく溶かします。基本的には反応溶媒として使われます。沸点が高いのでエバポレーターで除去するのは困難ですが、反応溶媒としての性能としては代え難いものがあります。反応溶媒だけでなく、ヴィルスマイヤー反応のホルミル化剤として使われるなど、溶媒以外の所でも使用されます。

ジメチルスルホキシド(DMSO)

DMSO融点:18℃(1)
沸点:189℃(1)
比重:1.10(1)
水への溶解度:混和する(1)

DMFと同じく非プロトン性の極性溶媒で、こちらも様々な有機化合物、無機化合物をよく溶かします。DMFよりさらに沸点が高く、エバポレーターで除去するのは非常に困難です。反応溶媒として主に使われますが、DMF共々どうやって除去するかを考えてから使った方が良いと思います。

 

化合物物性データ引用元

(1)東京化成工業株式会社SDS

(2)三協化学株式会社SDS

(3)キシダ化学SDS

(4)職場のあんぜんサイト

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