薄層クロマトグラフィー(thin-layer Chromatography、以降TLCと呼びます)とは、有機合成における分析手法の一つです。高価な分析機器を用いることなく、簡便に短時間で行うことができるため、反応の追跡に頻繁に用いられます。

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TLCの仕組み

化合物と吸着剤の相互作用の強さの違いを利用しています。

吸着剤(シリカゲルなど)が塗布されたガラスやアルミの板の下部を溶媒に浸すと、毛細管現象によって溶媒が板の上部に浸透していきます。

この時、板の途中に化合物が吸着されていると、溶媒に引きずられて化合物も移動していきます。

吸着剤と化合物が強く相互作用すればするほど、板の上を化合物が移動する速度は遅くなります。つまり、化合物によって板の上を移動する速度が変わるため、板の上で化合物が分離されます。

TLCのやり方

下図に、TLCのやり方を簡単に描きました。

TLCのやり方

  1. まず、化合物の溶液を、キャピラリーなどの細い管を用いて吸い上げます(毛細管現象)
  2. 溶媒を吸い上げたキャピラリーの先を、TLCプレートにつけると、溶媒がプレートに染み込みます(スポットといいます)。キャピラリーは一瞬つけてすぐ離す方が良いです。スポットが小さいほうが、展開(溶媒に浸して染み込ませること)した時に見やすくなります。
  3. 化合物をスポットしたTLCプレート下部を、溶媒の少し入った瓶に静かに浸して蓋を閉めます。(蓋を閉めないと、プレート上から溶媒が蒸発してしまいます)
  4. 溶媒が完全に上がりきる少し手前で、プレートを溶媒から出して乾かします。

重ね打ちが重要

反応を追跡したりする場合、重ねうちというテクニックが非常に重要になります。下に描いた図を基に説明します。

重ねうちの重要性

反応を追跡する場合、反応液の横に原料の溶液もスポットして展開します。それと共にもう一か所、原料と反応液を重ねてスポット(重ねうち)しておきます。

上の絵のように、原料と生成物のスポットが非常に近いことはよくあります。

さらに、反応液のスポットは反応溶媒に引きずられて微妙に位置がずれる場合があります。

重ねうちをしていないと、原料が本当は消失しているのにまだ反応が終わっていないと思いこんでしまうことになりますので、重ねうちは必ずするようにしましょう。

展開溶媒の選び方

展開溶媒は何を使えば良いのか?とりあえずいろいろ試していい感じの溶媒を探しましょう。次の基準を満たすのが理想です。

・展開後に溶媒フロント(溶媒が展開されたプレートの最も上の部分)、および原点(液をスポットした箇所)にスポットがない。

例として、個人的には下記の溶媒をよく使います。上のものほど高極性となります。

・メタノール
・酢酸エチル/メタノール
・酢酸エチル
・ジクロロメタン
・酢酸エチル/ヘキサン
・ヘキサン

メタノールの混合溶媒を使う場合、メタノールは少し入れるだけで大幅に極性が変わりますので、注意しましょう。

化合物の検出方法

TLC上で分離された化合物は、だいたいの場合目視では見えません。そのため、何らかの方法で検出する必要があります。

 

★UV照射器

一番ポピュラーなのが、UV照射です。TLCプレート上のシリカゲルには、UVを当てると緑に光る物質が塗られています。

UV吸収を持つ化合物がTLCプレート上にあると、シリカゲルにUVが届かなくなるため、そこだけが黒っぽく見えます。

ベンゼン環を構造中に持つ化合物は、だいたいこの方法で見ることができます。

 

★発色剤

UV吸収を持たない化合物の場合、発色剤を用います。発色剤はたくさんの種類があり、検出できる化合物にも違いがあります。それぞれの調整方法などは、下記のリンク先を見ると良いと思います。

TLC発色試薬の調整法

個人的には塩基性過マンガン酸カリウムが好きです。ドライヤーなどで焼けばほとんどのスポットが見える気がします。

 

 

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