有機合成で良く行う濾過方法の一つに、「吸引濾過」があります。このページでは、吸引濾過とはどのようなものか、その方法やコツについて書いていきます。
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吸引濾過とは
吸引濾過とは、自然濾過と違ってポンプやアスピレーターの吸引によってより濾過速度を高めた濾過方法です。
主に次のような場合によく使われます。
・水などの、濾過速度が遅いものの濾過
・再結晶後の固体を回収する場合
・細かい粒子が多く、自然濾過では目詰まりしてしまうもの
吸引濾過の模式図を下記に示します。
各部の簡単な説明を下記に述べます。
・桐山ロート: 吸引濾過専用のロートです。
・ゴムのアダプター: ロートとろ過鐘を密着させ、気密性を保ちます。
・ろ過鐘: 吸引濾過をするために作られた専用のガラス器具です。
・フラスコ: 吸引した後のろ液を受けます。
・高さ調節の台: フラスコの高さを調節します。
・ゴムの台: ろ過鐘をこれで密閉します。
・真空ホース: ろ過鐘とアスピレーターを繋ぎます。
・アスピレーター: 水流の力でろ過鐘の内部を減圧にします。
吸引濾過の手順
- まずは上記の装置を組み立てます
- 濾紙をセットし、濾過する溶媒で湿らせます(ここから先は、溶媒と書いたらこの溶媒のことを指します)
- アスピレーターまたはポンプによって減圧にします(ろ紙が密着します)
- ろ過したい液をよく混ぜながら、固体と一緒にロートに流し込みます。(3と4の間は、ろ紙が乾く前が望ましいです)
- 真空ホースとろ過鐘を静かに外し、減圧を解除します(勢いよく外すと、一気に減圧が戻ってろ紙が浮いてしまいます)
- ろ過した後のフラスコに少し残った固体を、少量の溶媒を用いてロート上に流し込みます。(溶媒の量は固体上面が浸る程度)
- アスピレーターで吸引します
- もう一度減圧を解除し、ロート上の固体が浸るくらいの溶媒を入れ、吸引します(この操作によって固体表面についた母液が流れ落ちます。場合によっては6だけでも十分です)
- 仕上げに、底が平らなビーカーか何かで固体を上から押しつぶすと、液がしっかりと切れます。
- 減圧を解除します(5と同様)
- アスピレーターを止めます
吸引濾過のメリット、デメリット
吸引濾過のメリットは、何よりもろ過速度が速いことです。水などは吸引濾過でないとほぼ落ちてきませんし、また、熱時濾過などの素早く濾過しないといけない場合は吸引濾過をするべきです。
また、残渣に母液が残りづらいのもメリットです。なので、再結晶後の結晶など、綺麗な固体を得たい場合は吸引濾過でないといけないと思います。汚い母液が残ると純度が下がってしまいますので。
一方、吸引濾過のデメリットもあります。一番は、準備と片付けがめんどくさいことです。自然濾過に比べて、準備するべき器具が多いので、ものぐさな私は吸引濾過はあまりやってませんでした。
また、吸引濾過ではろ過鐘内部が減圧になるため、ろ液の溶媒が飛びます。沸点が低い溶媒を使っていたり熱時濾過をする場合はけっこう飛んで行ってしまうこともあります。
アスピレーターの水の逆流に注意
吸引濾過の手順の5番目に述べたように、吸引を止める時に、ろ過鐘内部の減圧を解除せずにアスピレーターを止めてしまうと、アスピレーターの水が逆流することがあります。
これは気圧の差によるもので、水流が止まったことにより流れる力を失った水は、気圧の低い濾過鐘内に流れ込もうとするためです。
吸引濾過で一番注意するべきポイントなので、これだけは頭に入れておきましょう。