分液とは、水と有機溶媒が混じらずに二層に分かれることを利用した精製方法です。有機合成実験では、非常に頻繁に行われる操作となりますので、必ず習得するようにしましょう。

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分液の原理

多くの有機化合物は有機溶媒側に溶け、水には溶けません。反対に、多くの無機物は有機溶媒に溶けず、水に溶けます。分液後の有機溶媒側を濃縮することによって、水に溶けやすい物質を取り除いたものが得られます。

操作方法

ここに書いてある方法は、管理人が大学時代に行っていた方法です。水で洗う回数や飽和食塩水で洗うなど、所属する研究室によってローカルルールなどがあったりするのでそういう場合はそちらに従っておいた方が無難です。

基本的な分液操作
1.分液ロートに反応液を入れる
2.水を入れる
3.栓をする(スリの溝と穴の位置はずらすこと)
4.ひっくり返してコックを開ける(人に向けない)
7.1回振ってコックを開ける
8.2~3回振ってコックを開ける
9.振ってもあまりガスが出ないのを確認したらシャカシャカ振る(20回くらい?)
10.栓の溝と穴を合わせてしばらく置く
11.二層に分かれたら下層を抜き出す
12.上層を上の口から出す(上から出した方が内部に残った下層が混じりづらい)

この一連の操作を終えた後、水層に新しい有機溶媒を入れて分液操作を行うことを2回行います。その理由は、わずかに水層に逃げている目的物をできる限り回収するためです。

その後に得られた有機層をまとめ、新しい水で分液操作を2回行います。これは、有機層にまだしつこく混じっている無機物などを除くためです。

最後に、硫酸マグネシウム等の乾燥剤を加えます。意外と有機層には水が残っているので、それを取り除くためです。硫酸マグネシウムは通常は粉状ですが、水を吸うとガチっと固まる性質があります。振り混ぜて粉状の硫酸マグネシウムが残るくらいまで入れましょう。2~3分(自分の場合は)置いて、濾過したらあとは溶媒を飛ばすなりしましょう。

コツ、注意点

★上層と下層、どちらが有機層なのかに注意する
有機溶媒は、ものによって比重が異なります。比重が水より大きい溶媒は下層に、水より小さい溶媒は上層に来ます。だいたいの有機溶媒は比重が水より小さいため、上層にくるのですが、一部の有機溶媒は下層に来ます。下層にくるのはハロゲン系の溶媒が多く、ジクロロメタン、クロロホルムなどは大抵下層に来ます。

水に溶ける溶媒は使わない
例えばメタノールやエタノールなどのアルコール系溶媒は水と混じってしまうため、分液操作には使えません。そのような溶媒がたくさんある状態で、他の溶媒で分液しようとすると分離が悪くなることが多いので、できるなら予めエバポレーター等で取り除いておきましょう。

水層はすぐに捨てない
有機化合物の中でも、カルボン酸などの水に溶けやすいものもあります。目的物が有機層にいると思いこんで、有機層を濃縮したけど重さが全然足りない!でも水層は捨てちゃった・・・。ということがないように、有機層を濃縮して重量が妥当であることを確認するまでは水層はとっておきましょう。

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